モロッコに行ってきたぞ。(1日目)

こんちは、10月の後半からドイツにいて、久々に日本へ帰ってきましたよ。

さて、滞在の前半はドイツはエッセンのPACTって劇場で舞台の滞在制作をして、後半はドイツに住む我がワイフの家を拠点に現地のピアニストとか俳優とかコーディネーターの方など芸術関係の人たちに沢山会って来た。
本当はイタリア人のアーティストの友達に会いに行くつもりだったのだけど、彼が仕事で忙しいとのことだったので残念ながらイタリア行きは取り止めて、何か面白そうな気がするって理由だけで急遽モロッコへ行って来ましたよ。アフリカ大陸の北西の端っこのモロッコまではドイツからたったの4時間で着いちまうんだから人間の文明ってのはほんと凄いもんだ。
到着したその日は宿にチェックインしたらもう日が落ちそうだったので、すぐに宿の近くのレストランへ向かうも、途中で劇場を発見したのでフラッと寄ってみたらモロッコの俳優学校の学生さんたちと遭遇。残念ながらパフォーマンスは見られなかったけど現地の俳優と少し立ち話をしてお互い頑張ろうな!って言ってバイバイ。
本来の目的地のレストランへ。
僕らが訪れたのはモロッコのアガディールという海沿いの町で、とにかく海鮮が美味いのなんの!食べて飲んで1人3,000円位だからかなりリーズナブルなのだけど、モロッコの人たちの金銭感覚(平均月収が3〜3.5万円だそうな)からしたらなかなかの高級店で、美味しいものが大好きな僕らは大満足でした。食事を済ませていざ宿へ戻りましょうってことで2人で宿へ帰ります。
アガディールの治安は基本的に良いんだけど、「夜道を歩いていて、この道は何となく変だと感じたらやめなさい」というすごく曖昧なガイドラインに従って、遠回りになるけどなるべく明るい道を帰っていたら我々はいつの間にかクラブとかバーが立ち並ぶ繁華街みたいな所に行き着いた。
そこで僕たちに歩み寄って来たのが10歳位であろう1人の少年。多分お金をくれってことだったんだと思うけど僕らに無言で手を差し出してきて。でもほんとに手を差し出すのとほぼ同時に何事もなかったかの様に手を引っ込めてネオンがビカビカにきらめく町を「いつも通り」って感じで歩き回りはじめた。
手を差し出して僕らから去っていった間に、この子からお願いとか諦めとか、そんな感情の気配が一向に感じられなくて、その代わりただ強烈に感じたのが妙な存在感の無さ。この子は生まれてからこの町で誰かに「見てもらったこと」がないんじゃないかってこと。

クラブのセキュリティのお兄さんたちも僕らを含む観光客もその子を無視するとか邪魔だとか言って追っ払うわけじゃなく、ただ居ないものとして扱っていて。
彼も彼で、誰の目を気にするわけでもなくクラブ界隈のツルツルの大理石で出来た石畳をスケートみたいにして遊んでみたり、クラブの脇道に捨てられてたペットボトルのジュースを自宅のキッチンから取ってきたみたいに飲んだり。ともするとこの少年は自分のことを幽霊とか透明人間だと思い込んでいるんじゃないかと思うような、その少年と町の関わり方を見てこの町はまるでオメラスの様な町だなと感じていました。

そしてその光景を見て何とも言い難い感情を覚えた僕も翌日にはニュートラルな心に戻っていて、僕はオメラスから歩み去らない側の人なんだなと言うことを感じました。

2日目に続くぞ(多分)