庭劇団ペニノ『地獄谷温泉 無明ノ宿』

庭劇団ペニノ、地獄谷温泉 無明ノ宿のフランス公演を終えて無事に帰国しました。
初めてこの作品に出演したのが2015年の初夏だったので、三年半色んな国を巡って長い長い付き合いになりました。
そんな作品も今回のツアーでお終いです。
なんでかっちゅーとこのセット、今は多分北大西洋あたりを日本に向けて航海中なんだけど、日本に着いたら燃やしてしまうので。老朽化で。こんなにお家みたいにも使えるから、日本のどっかの山にこっそり建て込んでそこで皆で飲めば良いのにね!
初演の頃は唐組の辻 孝彦さんが僕の相手役でした。辻さんはツアー中なんかに深酒をするとよく僕みたいな若者連中を掴まえて管を巻くんだけど、翌朝になるとかすかに残る昨晩の記憶のせいかやけに優しくて(笑)朝ごはんに目玉焼きを焼いてくれたりするとってもチャーミングな人でした。

2年前にパリで一緒に公演をした時には最終日、急に役の内面がガラッと変わってそれまでも辻さんとお芝居をするのはとっても楽しかったのだけど終演後に僕は生意気にも「辻さん!!今日辻さんとお芝居するのすっごい楽しかったです!何ですか今日のは!」って伝えたら辻さん「やっぱ分かるよね〜。うん、やっと諦められたんだよ〜。」って。当時はその言葉が上手く理解できなかったけど、今はなんとなく辻さんが僕に教えてくれようとしてくれてたことが分かり始めている気がします。

そんな辻さんは今年、僕らがフランスに行く少し前に癌で亡くなってしまいました。亡くなる直前まで「フランスに行くんだ」って周りの方々に話してくれていたそうで。
お芝居が大好きなとってもお茶目なオジさんで、辻さんと共演できて舞台でも舞台裏でもすごく楽しかったです。辻さんありがとうございました。
ところで僕は昔一度サラリーマンやってたんだけど、やっぱりどうしてもお芝居がやりたくて。久々に舞台の世界に帰ってきて最初に出演したのがこの作品だったからとても思い入れのある作品になりました。
まだまだ色んな国をこの作品と回ってみたかったけど仕方あるめえ。こんなに長く一つの作品に触れ続けることはなかなか無いだろうし、俳優として沢山のことを学べてすごく楽しい三年半でした。

作家で演出家のタニノさん、そしてツアー先の人も含めたら一体どれだけの人がこの作品に関わってくれたのか分からないけれど、とにかく皆さんに感謝の気持ちが垂れ流しに溢れています。どうもありがとうございました。さよなら無明ノ宿!!
また楽しいことやりましょう。